アメリカの日本人大学院生にインタビュー①:麻辣さん(高等教育専攻/博士課程)

アメリカの大学院で学ばれている日本人留学生の皆さんにインタビューをする企画を始めることにしました。日本で勉強したり、働いているけどイマイチ自分が何がしたいのかわからない、何か新しいきっかけが欲しいと思っている人に届けたいと思っています。

第1回目はアメリカで高等教育(Higher Education)を勉強している麻辣さん。

麻辣さん

日本の大学で法学部を卒業後、金融関連企業に就職。1年半のサラリーマン生活後、2012年に渡米。東海岸の小規模リベラルアーツ大学に編入し、社会学・人類学で学士号を取得。その後は国際教育専攻で修士号を取得し、現在は中西部の某大学にて高等教育専攻の博士課程大学院生として奮闘している。

もともと日本で大学を出たあとに就職して働かれていたそうですが、留学を意識し始めたのはいつ頃だったんですか?

就職してからです。サラリーマン生活が人生でもっともつまらなかったんですよね。留学とかいうよりも、まずは会社を辞めたい気持ちが強くて、その後の進路として留学が出て来ました。

転職をするにしても、1年半働いただけだとなんのスキルもなく、給料のアップも見込めないですよね。そこで大学時代にやりたいと思っていた「留学」を思い出したんです。

「昔、留学したいと思っていたよな。MBAとか取得するの良さそう」などと安易な発想のもと、いろいろ調べてみたらGPAと英語の壁にぶち当たりました。

GPAと英語の壁といいますと

僕が在籍していた法学部は、法曹界に行く人を養成するようなところでした。最初の1学期目で気づいたんですが、入学当初の見込みと違い僕は法曹にそこまで興味が持てなかったんですよね。そうすると、特に勉強することもなく、成績は良くありませんでした。英語も受験英語しかやったことがなかったので、MBAに行けるような能力はありませんでした。そこでどうやったら留学できるか、留学エージェントに相談したときに提案されたのが学部編入というスタイルでした。

必ずしも卒業する必要はないから、GPAと英語力を上げて、MBAに出願することを勧められました。

大学編入にもいろいろな形がありますが、リベラルアーツの大学を選んだ理由は何だったのでしょうか?

大きな州立大よりも、小さなリベラルアーツの方が鍛えてもらえるのではないかと思ったからですね。数校出願し、母校となる大学から合格をもらいました。

リベラルアーツ大学では具体的にどんなことを勉強されていたんですか?

MBAに行くために留学したので、最初の1年半はビジネス専攻でした。

大学院では国際教育を勉強されていましたよね?何がきっかけでビジネスから教育に方向転換をしたんですか?

リベラルアーツ大学での生活が大きな影響を与えてくれました。もともと日本で受けてきた教育が嫌いでした。理由を説明されて、その理由に納得できないと行動したいと思えませんでした。何も考えずに言われたことに対して「はいはい」と言いながら行動することに抵抗がありました。

リベラルアーツ大学で勉強を始めたとき、自分の意見を自由に発言できる環境に驚きました。小学校から大学までの長い間、日本で受けてきた教育と違うなと。そこで日本とアメリカの教育の違いや教育システムに興味を持ったんです。

とはいえ、教育や教育システムの違いは文化の違いであるとも思いました。なので社会学と人類学に専攻を変更しました。

もともとは卒業する予定がなかったんですが、編入扱いで卒業に必要な単位も少なく、学位があれば大学院の出願に有利になるので、社会学と人類学で大学を卒業しました。大学院には学部在学中に出願していました。

そして大学院に進学されたんですね。国際教育を専攻にしたのは、日本とアメリカの教育の違いを学びたいと思ったからですか?

そうですね。比較教育ができる大学院がいいと思っていました。ただ行き当たりばったりなところがありましたね。進学した大学院も「比較教育で有名なとこだからとりあえず入ってみるか」という気持ちでした。特に比較教育といえば施策比較が重要かと思い、それをConcentrationにできるプログラムに決めました。

そんなこんなで1年目は、PISAなどの国際教育比較のテストの研究をしている教授のもとでリサーチアシスタントをしました。施策の比較に使われるPISAやTIMSSが、教育施策の決定にどんな影響を与えているのか、ランキングによってPublic Opinionがどのように変わるのかなどを学びました。

その教授はPISAやTIMSSに限らず、K-12にフォーカスしていました。だけど僕はK-12よりも高等教育に興味があったんですよね。なので高等教育の教授を紹介してもらい、2年目はそちらの教授のもとで働きました。大学の授業のクオリティをどのように変えていけるかといったことをリサーチしていました。

PhD課程への進学を意識したのは、いつ頃だったんですか?

修士課程受験の頃でした。修士はPhDに行くための準備期間と捉えていましたね。

PhDではどんな研究をしたいと思って、今の大学を選んだんでしょうか?

僕がやりたいことは、教育の国際比較です。もともとは日本とアメリカの教育の比較をしたいと思っていましたが、今は特に日本に限らず他の国の比較にも興味があります。その中でも高等教育の分野に強い関心があります。

例えば大学教育において、学生のAcademic Performanceを測るものってないんですよね。大学ごとの比較って大学ランキングしかないんです。ランキングに大きく欠けているのは、「学生が大学に入って能力がどのくらい伸びたのか」ということです。

この観点から、例えば日本とアメリカの優秀とされる大学を比べたときに、比較できるのでしょうか。まだこのような研究がないので、PhDに行こうと思いました。

PhDの学位を取得したあとの進路はどのように考えていますか?

大学の教授になりたいです。高等教育のLearning Outcomesを研究していきたいので、①研究者として生徒の成長を促す要因(環境や授業方法等)の研究と、②研究結果を実際に運用しながら学生の発展に還元できるような授業をやっていきたい、ということを考えています。

高等教育の分野だとPhDを取ったからといって皆が教授になるわけではないんですよね。採用が冷え込んでて、ポジションが限られていることもあり、PhDを取得したあとは大学実務家になる人もいます。ただ僕は教授になりたいので、ポジションがあれば、アメリカ以外の国でもアリかなと思います。

将来の目標などはありますか?

アメリカで研究したことを日本の大学システムで活かしてみたいなとは思います。ただ、日本国内の大学院でトレーニングを受けたわけでもなく、ストレートで博士を取っていないので年齢のこともあり、日本には帰れないのかなと思うことがあります。なので、このまま海外でキャリアを積むしかないですね。そのためにも今後も頑張っていかないと、と思わされます。

最後になりますが、これから留学したいと思っている大学生や、若手社会人の方々にメッセージはありますか?

日本で生活することにイマイチだなあと思っていて、少しでも留学に興味がある人に、留学をしてみるという選択肢もあるということを伝えたいです。日本の大学にいても興味があることがないという人も多いですよね。

留学は大変だけど、アメリカのいいところは動けば動くほど返ってきやすい国だと思います。個人的にはアメリカに来て初めて自分が面白い・やりたいと思えることが見つけられました。留学が人生を変えました。こんな風に思える人が少しでも増えたらいいなと思います。

ありがとうございました!

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オフィスのみんなの落書き

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麻辣さんのオフィス