アメリカンまたたび

2018年秋からニューヨーク大学の大学院で留学生教育を勉強する予定。

日本でCritical Race Theoryの教育を行うことについて、その1

Twitterでわたしが大学院で書いたペーパーを日本語したら読んでみたいという人が多かったので、訳してみることにしました。

第1回目のペーパーは国際教育の基礎のクラスで書いたペーパーです。このクラスでは授業で学んだテーマを元に、複数の文献を参照しながら自分の切り口で書くことが求められています。わたしはCritical Race Theory(人種問題を批判的に考える理論)の目線から、日本における人種問題について取り上げました。

なぜわたしが日本における人種問題について書いたかというと、クラスメイトが「日本は単一国家でしょう?」と言ったきたことに由来します。

わたしの地元には日立の大きな工場があることから、ブラジルや中国、フィリピンの人をたくさん見てきました。同級生にも外国籍の人は多くなくても、数人はいました。日本には外国人の人が暮らすことが当たり前だと幼い頃から思っていました。またわたしは当事者じゃないので詳しいことはわかりませんが、わたしが通っていた学校では外国人であるがゆえにいじめは起きていなかったなあと記憶するし、みんなが普通に仲良くしていたと思います。

大学を中退後、アメリカに留学をしたときに、日本で生まれ育った多くのアメリカと日本のハーフの人たちと出会いました。彼らから、小さい頃はハーフであることでいじめられてきたり、英語が話せて当たり前だと思われることで辛い思いをしてきたことを聞きました。この事実にわたしは驚きを隠せなかったと共に、自分の無知さを痛感しました。

わたしはニューヨーク郊外の州立大学で公民権運動の歴史についての授業を受け、アメリカにおける人種問題の深刻さについて学びました。考えてみれば、このような教育を受けた機会は日本にいるときはなかったなあと思うんです。まあ地域や学校にもよると思いますし、わたしの経験が絶対ではないと思います。

単一国家ではないのに、このように外国人や複数の文化的バックグラウンドを持つがゆえにいじめや差別が起きることに対して、CRTが何か効果を発揮できることを考えたかったので、このテーマでペーパーを書くことにしました。

長くなりそうなので、2〜3回に分けて翻訳したものを掲載します。

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国際教育の基礎のクラスでCritical Race Theory(CRT)についての授業を行ったときに、わたしのディスカッショングループでは「自分たちは母国で人種や多様性に関することを教えてもらったか?」ということについて話し合った。その時に1人のグループメイトが「日本は日本人しかいない国だろう?」と言った。わたしは「そうじゃない」と言った。そうすると彼は「日本の学生が人種問題について教えられないということは、日本は人種のことをそんなに深刻な社会問題だと思われていないということじゃないのか?」と言った。

一般的に日本という国にそれほど関わりがない人は、日本は単一民族国家だと思う傾向がある。しかし、日本はれっきとした多民族国家である。

クラス内のディスカッションを通し、私は小中高の教育で人種について学んでこなかったことに気が付いた。そして日本の教育は人種問題の重要性を無視してきているのではないかと。なぜこの国は子供達に人種に関する問題を教えないのだろうか?このペーパーでは、日本における人種教育問題を考え、そしてCRTを日本の教育に導入することの提案を行う。

様々な文化や人種のバックグラウンドを持つ人々が日本では暮らしている。総務省の統計によると、200万人もの外国人が日本で働いたり、学んだりしている。これは総人口の1.88%に相当するそうである。ここにはハーフやクォーターの人たちは含まれていない。在日外国人の多くは中国、韓国、フィリピン、アメリカなどからやってくる。第二次世界大戦中は日本は韓国を植民地とした歴史があることから、在日韓国人への差別の問題は根強い。また日本では外国人実習生制度を開始したことから、多くの若者たちが主に他のアジア諸国から働きに日本へやってきている。

このように多くの外国人が日本で生活をしているにも関わらず、子供達は多民族国家としての日本における人種問題について学ぶ機会が非常に少ない傾向がある。人種教育の欠如は、公での人種差別を頻繁に引き起こしているのではないだろうか。

2015年。アフリカ系アメリカ人と日本人のハーフである宮本アリアナさんがミスユニバースの代表に選ばれた。彼女の父親は長崎県佐世保市の米軍基地に勤務していた経験を持つ。Panwar (2015)は「多くの日本の保守層は宮本さんが本当の日本人のように見えないと言っている。だから日本を代表するなというコメントも非常に多い」と非難した。

直近だとUSオープンで優勝した大坂なおみ選手に対する批判が記憶に新しいだろう。彼女はハイチ系アメリカ人の父と日本人の母を持つ。多くの保守的な日本人は彼女の国籍や外見に冷たい言葉を浴びせた。Ido(2018)は大坂選手が二重国籍であること、日本語の流暢さ、そして4歳からアメリカで生活していることが理由で批判されているのだと述べた。この様子は宮本さんが批判されていたのと非常に似ている。

私の意見では、このように複数の文化的背景を持つ人に対して批判する人々は、日本が多民族国家であることを自覚していないのではないかと考える。

CRTは日本における人種差別を少なくしていくための解決策のひとつになるだろう。Kumasi(2011)は、CRTにおける鍵となるコンセプトを紹介した。例えば、Hegemony、Race、Voiceなどである。Kumasiが紹介した例はほとんどがアメリカのものであるが、これらのコンセプトは日本での事例にも応用ができる。

続きはその2でお読みください。

 

【参考文献】

- Ido, M. (2018, September 16). Who is "Japanese people"? People are missing important points when they talk about Ms. Naomi Osaka. Retrieved November 27, 2018, from https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57527

- Kumasi, K. (2011). Chapter 7. Critical Race Theory and Education, Mapping a Legacy of Activism and Scholarship. In Beyond Critique, Exploring Critical Social Theories and Education (pp. 113-138). Abingdon, United Kingdom: Routledge.

- Ministry of Justice in Japan. Demographics of Foreign People Population in Japan. (n.d.). Retrieved November 27, 2018, from http://www.moj.go.jp/content/001237697.pdf

- Panwar, S. (2015, March 27). Half-Japanese, half-black: Why new Miss Japan isnt Japanese enough.” Hindustan Times. Retrieved from

http://proxy.library.nyu.edu/login?url=http://search.ebscohost.com/login.aspx?direct=true&db=n5h&AN=2W62799269286&site=eds-live